なぜEMS(環境マネジメントシステム)に取組むのか ①(2011.6)
環境のシーラカンス
EMSとは、環境マネジメントシステムの英語の頭文字をとったものです。それぞれ、環境のE、マネジメントのM、システムのSです。環境管理システムと言う方もいます。
私たちの事務所では特に中小企業の方々の環境管理システム構築を支援しています。
現在では「環境」という言葉も市民権を得て、少し古ぼけた感がするくらいです。事務所の古株S君は環境の仕事を続けて約40年!です。環境のシーラカンス的な存在です。「僕が環境の仕事を始めた頃は、公共事業をする時にも殆ど環境調査なんてしなかった。社会人になって最初の環境調査で<着工は時期早尚>と書いたら国交省(旧建設省)の事務所で60センチもある報告書をぶん投げられた」という話もだいぶ昔話になりました。その後、環境を巡る社会の目も大きく変わりました。
この間、一度も筆を舐めずに(データを誤魔化さず、媚びず……)よくも仕事を続けられたと思いますが、やはり、多くの方の応援がありました。開発を進める責任者の方たちとよく言い合いもしましたが、なによりも、そうした方たちから「頑張れよ!」と励まされたことも少なくありません。
時代の波はありましたが、自然や環境を大切にしたい、と思う心は昔もちゃんとあったと思います。現在では環境を大切にすることが当たり前にも言われ、環境企業が業績を伸ばす時代にもなりました。
今、あらためて環境企業になるために何が必要なのか、自らも業界初のISO9001やISO14001の認証取得を経験し、県のISO14001推進員や、エコアクション21(以下、EA21と書きます)の審査人をしているEMSキャリア40年と、キャリア20年が一緒に考えた『環境企業への道』です。
選択肢はたくさんある、目的をはっきりさせよう
環境が全てではありません。「今の時代は品質じゃなくて、環境だな」とよくお聞きします。あるいは「ISOは大変だからエコアクション21にしたい」など、経営者の様々な声をお聞きします。動機や目的は様々です。しかし、なによりも大切なことは、自分の企業にお客は何を求めているのか、自分の企業の得意は何なのか、今、自分の企業に何が必要なのか、……本当に必要なものをきちんと見つけることがとても大切な気がします。
例えば、以前、千曲市でEA21の勉強をされていた千曲市内の漬物等の製造・販売企業さんが、勉強会に来られなくなった。だいぶ経ってから事情をお聞きしたら、EA21をやめてISO22000の認証取得に向けてチームを作られた、とのことだった。お話しをお聞きしたら、「ごめんね、当社は食品を作っているので、まず消費者に安全・安心な食べ物を届けるという点で、食品安全の管理システムにしました。」とのことでした。
またある時、一緒に省エネの勉強会をさせていただいている薬用酒製造会社さんの工場を見せていただいた折に、EMSの取組みについてお聞きしたら、「当社は独自のシステムにしました」とのことでした。自社でお願いした学識経験者等の委員によって環境取組を評価してもらう、という自己宣言型(自己責任型)に切り替えたそうです。
当然、各社各様、様々な取組みがあっていいと思います。みんなで整理整頓からやり直そうと5Sに取組んだり、取引先からの要請で取得したり……と、いろんな目的があっていいと思います。
当たり前のことですが、どこかのコンサルに説得されたり、他社が認証取得したから、といったことでなくて、自分の会社(組織)に合った取組みをされる事がまず最重要です。
自分自身が十分に納得したものでなければ、日常の自分たちの仕事に十分につな繋がったものでなければ、いずれその取り組みは負担になったり、ただ、目的もなく続けることにもなりかねません。せっかくなら、生きたシステムにしたいものです。
今、自分たちに大切なことは何なのか、環境? 健康? 安全? 自由に考えて、環境が必要だと判断されたなら、私たちも応援できます。